
宅建業免許の要否
宅地建物取引業(宅建業)とは、➀「宅地」「建物」に関する➁「取引」を③「業」として行うこと
これに該当すると、宅地建物取引業(宅建業)の免許が必要!
宅地
用地地域内 ⇒ 現在、「道路・公園・河川・水路」に利用されている土地を除く、全ての土地
用途地域外 ⇒ 「現在、建物が建っている土地」および「将来、建物を建てる目的で取引される土地」
➀現在、建物が建っている土地 | ➁将来、建物を建てる目的で取引される土地 | ③左記以外の土地(更地・農地等) | ④現在、「道路・公園・河川・水路」に利用されている土地 | |
用途地域内 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
用途地域外 | 〇 | 〇 | × | × |
➀現在建物が建っている土地&➁将来建物を建てる目的で取引される土地 ⇒ 〇 宅地に該当
都市計画法に規定する工業専用地域内の土地で、建築資材置き場の用に供されているものは、法第2条1号に規定する宅地に該当する(27-26-1)
工業専用地域ということは用途地域内の土地になります。したがって、現に道路・公園・河川・広場・水路に使用されていなければ、「宅地」に該当する。本肢は表の③に該当する土地です
建物
建物には、住居・店舗・事務所・倉庫・工場など、どのような用途のものでも、屋根・柱・壁を備えているものであれば含まれる。
マンションのような共同住宅では、1つ1つの部屋を建物として扱います。
Dが共有会員制のリゾートクラブ会員権(宿泊施設等のリゾート施設の全部又は一部の所有権を会員が共有するもの)の売買の媒介を不特定多数の者に反復継続して行う場合、Dは免許を受ける必要はない(17-30-3)
共有会員制のリゾート会員権は、「宅地・建物」に該当する。したがって、Dは宅建業の免許が必要である
取引
「取引」とは、売買・交換を自ら行い、または売買・交換の代理・媒介をすることおよび貸借の代理・媒介をすることを指します。
貸借については、代理・媒介として行うものだけを含み、自ら行うものは含まれません。
売買 | 交換 | 貸借 | |
自ら行う | 〇 | 〇 | × |
代理して行う | 〇 | 〇 | 〇 |
媒介する | 〇 | 〇 | 〇 |
転貸(又貸し〉することも「賃貸」に含まれるぞ
A社が所有する土地を10区画にほぼ均等に区分けしたうえで、それぞれの区画に戸建住宅を建築し、複数の者に貸し付けた。このA社の行為には免許を要する。(30-41-1)
自ら賃貸する行為は、「取引」には該当しないので、免許不要
業とは
業として行うとは、不特定多数の者を相手として、反復継続して取引を行うこと
業として行うに該当するか | |
自社所有地を区割りして不特定多数の者を相手に分譲 | 〇 (該当する) |
自社所有地を一括して売却 | × (該当しない) |
自社の従業員のみを対象に自社所有地を分譲 | × (該当しない |
国等の宅建業の適用を受けない者のみから反復継続して宅地を購入 | 〇 (該当する) |
ある会社がその会社の従業員のみを対象に自己所有地を区画分けして分譲するような場合は、相手がその会社の従業員のみに特定されているので、「業」には該当せず、免許は不要になります。
土地の所有者が、自己所有の土地を一括して売却する行為は、一回だけの行為であり、反復継続した行為ではないので、「業」には該当しません。したがって、免許は不要です。
Eが転売目的で反復継続して宅地を購入する場合でも、売主が国その他宅地建物取引業の適用がない者に限られているときは、Eは免許を受ける必要はない。(26-26-ウ)
「売主が国その他宅地建物取引業の適用がない者」に限られていても、「不特定多数の者」を相手にしていることになる。
宅建業に該当しても免許不要の例外
「宅地」・「建物」に関する「取引」を「業」として行う場合、原則として、宅建業の免許が必要です。
ただし、例外もあります。
例えば、国や地方公共団体は、そもそも宅建業法の適用対象ではありません。
したがって、国や地方公共団体は免許を受けずに、宅建業に該当する行為を行うことができます。
原則 | 宅建業を行うためには、免許が必要 |
例外 | 宅建業を行う場合でも以下の場合は、免許不要
|
➀はそもそも宅建業法の適用対象ではない主体です。
➁信託業法に基づく内閣総理大臣の免許を受けた信託会社・信託銀行は、国土交通大臣に届け出ることで国土交通大臣免許を受けたものとみなされます。したがって、宅建業の免許を受ける必要はありません。
③みなし宅建業者は、免許が失効した者が免許失効前に行った取引について、その取引を結了する目的の範囲内においては宅建業者とみなされ、宅建業の免許がなくても宅建業を行えます。
- 死亡した宅建業者の相続人
- 合併によって消滅した宅建業者の合併後の法人
- 免許を取り消された宅建業者
- 廃業した宅建業者
- 免許の効力がなくなった宅建業者
宅地建物取引業者であるDが、宅地建物取引業者でない法人Eに吸収合併されたことにより消滅した場合、一般承継人であるEは、Dが締結した宅地又は建物の契約に基づく取引を結了する目的の範囲内において宅地建物取引業者とみなされる。
Dの宅建業の免許は、合併してもEに承継されることはない。しかし、合併により消滅する法人Dが合併消滅の前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内では、Eは宅建業者とみなされる。
宅建業免許の種類
事務所は1つの都道府県だけに設置 ⇒ 都道府県免許
(申請手続き)事務所が所在する都道府県知事に直接申請
事務所を複数の都道府県に設置 ⇒ 国土交通大臣免許
(申請手続)主たる事務所(本店)の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、国土交通大臣に申請
➁宅建業を営む支店(従たる事務所)
③支店ではなくとも、「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅建業にかかる契約を締結する権限を有する使用人を置く店舗等」
案内所ときちんと区別できるようにしておくこと!
免許証
免許をした国土交通大臣および都道府県知事は、免許証を交付する必要がある。
国土交通省および都道府県は宅建業者名簿を備え、一般の閲覧に供する必要もある。
国土交通省 ⇒ 国土交通大臣免許の業者の名簿
都道府県 ⇒ 当該都道府県知事免許の業者と当該都道府県に本店を置く国土交通大臣免許の業者の名簿
宅建業者名簿の登載事項 | 変更の届出の対象 |
➀免許証番号と免許年月日 | |
➁商号又は名称 | 〇 |
③事務所の名称と所在地 | 〇 |
④法人の場合、役員の氏名および政令で定める使用人の氏名 個人の場合、宅建業者の氏名・政令で定める使用人の氏名 |
〇 |
⑤事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名 | 〇 |
⑥過去に指示処分又は業務停止処分を受けた場合、処分の年月日とその内容 | |
⑦宅建業以外の事業を営んでいるときは、その事業の種類 |
➁~⑤までの事項について変更を生じた場合は、宅建業者は、30日以内にその旨を、免許権者(国土交通大臣・都道府県知事)に届け出る必要がある
④法人の場合、役員の氏名および政令で定める使用人の氏名
だから、⑦他の事業(副業等)に変更が生じても届け出る必要はない
⑤事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名は要注意だ!
免許の書換え交付
免許証記載事項に変更が生じた場合には、宅建業者は、免許証の書換え交付の申請が必要だ
免許証記載事項
- 商号・名称
- 代表者氏名
- 本店所在地
- 免許証番号
- 有効期間
➀➁③に変更があった場合が「書換え交付申請」の対象となる
➀商号又は名称 ➁代表者の氏名 ③本店(主たる事務所)の所在地 に変更があった場合
⇒「書換え交付申請」&「宅建業者名簿の変更の届出」の両方が必要
廃業等の届出
一定の事由が生じた場合、その旨を免許権者に届け出る必要がある
個人業者の場合
事由 | 届出義務者 | 届出期限 | 免許の失効時 |
死亡 | 相続人 | その事実を知った日から30日以内 | 死亡時 |
破産手続開始の決定 | 破産管財人 | 決定の日から30日以内 | 届出時 |
廃業 | 本人 | 廃業の日から30日以内 | 届出時 |
法人業者の場合
事由 | 届出義務者 | 届出期限 | 免許の失効時 |
破産手続開始の決定 | 破産管財人 | 決定の日から30日以内 | 届出時 |
廃業 | 代表役員 | 廃業の日から30日以内 | 届出時 |
解散 | 清算人 | 解散の日から30日以内 | 届出時 |
合併による消滅 | 消滅会社の代表役員 | 合併の日から30日以内 | 合併による消滅時 |
宅建業を廃業したり、免許の取消処分を受けたときは、遅滞なく免許証を返納する必要がある。
免許換え
事務所の設置状況 | 免許換え | 手続 |
➀甲県のみの設置から乙県にも設置 (甲県と乙県の両方に設置された状態) |
甲県知事免許⇒国土交通大臣免許 | 甲県知事を経由して国土交通大臣に申請 |
➁甲県のみにあった事務所を廃止し、乙県に移転(乙県のみに設置されている状態) | 甲県知事免許⇒乙県知事免許 | 乙県知事に直接申請 |
③甲県と乙県にあった事務所のうち乙県の事務所を全部廃止(甲県のみに設置されている状態) | 国土交通大臣免許⇒甲県知事免許 | 甲県知事に直接申請 |
一方、➁は甲県知事は経由せず乙県知事に直接申請なので注意!
1つの県(A県)から複数県に事務所設置 ⇒ A県知事を経由して国土交通大臣に免許換えを申請
免許換えによる新規の免許の有効期間も5年
免許換えをしなければならないのにもかかわらず免許換えの申請を行わなかった場合
⇒必ず免許取消しになる
免許の基準(欠格要件)
免許の取消処分に関連する要件
➀次の3つの理由に該当し免許が取り消され、その取消しの日から5年が経過しない者
- 不正の手段で免許を受けた
- 業務停止処分に違反した
- 業務停止処分事由に該当し、情状が特に重い
A社の役員Bは、宅地建物取引業者C社の役員として在籍していたが、その当時、C社の役員Dがかつて禁鋼以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過していないとしてC社は免許を取り消されている。この場合、A社は、C社が免許を取り消されてから5年を経過していなくても、免許を受けることができる。(23-27-1)
法人である宅建業者が一定の事由により免許取消処分を受けた場合、その法人の役員も欠格要件に該当する。しかし、C社の免許取消処分はこの一定の事由に該当しないことから、Bは欠格要件に該当せず、A社は免許を受けることができる。
➁ 上記➀の3つの事由を理由とした免許取消処分にかかる聴聞の公示の日から取消しの決定の日までの間に、正当な理由なく宅建業の廃止の届出をした(処分を免れた)者で、届出の日から5年を経過しない者
③法人の免許取消処分にかかる聴聞の公示日の前60日以内に役員であった者で、取消しの日から5年を経過しない者
④免許取消処分にかかる聴聞の公示日から取消しの決定日までの間に、正当な理由なく宅建業の廃止の届出をし処分を免れた法人において、聴聞の公示日の前60日以内に役員であった者で、届出の日から5年を経過しない者
④は免許の取消処分を免れた➁に対応したものだよ。
「免許取消処分」の聴聞の公示がされた後、処分等の決定の日までに相当な理由なく廃業の届出を行った者は、届出の日から5年を経過しなければ免許を受けることができないが、「業務停止処分」の聴聞の公示はこれに該当しない。したがって、Cは免許を受けることができる。
刑罰に関連する要件
⑤禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終えてから5年を経過しない者
⑥下記の罪により罰金刑に処せられ、その刑の執行を終えてから5年を経過しない者
- 宅建業法違反
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反
- 傷害罪・現場助勢罪・暴行罪・凶器準備集合および結集罪・脅迫罪・暴力行為等処罰に関する法律違反
- 背任罪
あとは、宅建業法違反と背任罪、暴力団と個別に覚えておけば大丈夫だ!
罪に種類に関係なく、懲役刑に処せられて、その刑の執行を終えた日から5年を経過しない場合は、免許の欠格要件に該当する。したがって、免許を受けることはできない。
申請者の能力に関連する要件
⑦成年被後見人・被保佐人
⑧破産者で復権を得ない者
⑧は復権を得ればすぐに免許を受けられるぞ!
不正行為に関連する要件
⑨免許申請前5年以内に、宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者
⑩宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者
暴力団に関連する要件
⑪暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員)または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等)
⑫暴力団員等がその事業活動を支配する者
役員等が欠格者であることに関連する要件
⑬法人の役員が上記➀~⑪に該当する場合の当該法人
執行猶予期間が無事満了すれば、刑の宣告自体がなかったことになるので、満了後すぐに免許を受けることが可能となる。満了後5年の経過を待つ必要はない。
ただ、執行猶予期間が満了すると刑の宣告自体がなかったことになるので、5年を待たずに免許を受けられるので注意!
⑭(法人・個人共通で)政令で定める使用人が➀~⑪に該当する場合の当該法人および個人
⑮宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を「有しない」未成年者が申請者の場合において、その法定代理人が➀~⑪に該当する場合の未成年者