憲法総論
憲法の規範としての特質
憲法の規範としての特質として、次の3つを挙げることができます。
①自由の基礎法、②制限規範、③最高法規の3つです。
自由の基礎法
そもそも近代市民革命以降において憲法(立憲的意味の憲法)が制定された目的は、国民の自由が国家権力によって不当に制限されることを防ぐことにありました。
そこで、日本国憲法においても国民の自由を保障する規定(人権規定)が数多く置かれています。
したがって、憲法は国民の自由を保障するための根拠規定として機能します。
つまり、憲法は、国民の自由を基礎づける「自由の基礎法」としての特質を備えているということになります。
制限規範
国民の自由や権利を侵害する最大の主体は国家権力です。
国内において最高の力をもつ国家権力が我々国民の自由や権利を不当に侵害しだすとそれを止める担い手は(少なくとも国内においては)存在しないことになります。
そこで、国民の自由・権利を守るために、憲法は、国家権力が国民の自由や権利を不当に侵害しないように、国家権力を縛っていく必要があります。
つまり、憲法は、国家権力を名あて人(相手方)として、国民の自由や権利を侵害しないように国家権力を制限する法(=制限規範)として働くという特質も備えています。
最高法規
憲法は、国民の自由や権利を守るために国家権力を制限していく法規範です。
仮に、憲法よりも強い国家権力が存在したり、憲法よりも上位に位置する法規範を国家権力が作り出すことができるとすると、憲法が国民の自由や権利を守るために国家権力を制限していくことは不可能になってしまいます。
したがって、憲法は、すべての国家権力よりも上位にあって、すべての国家権力に歯止めをかけることが可能である必要があります。つまり、憲法は、他のすべての法規範に優越し、その国の法体系において最上位にあることが求められるのです。
そこで、憲法は法体系の中で最上位に位置付けられており、「最高法規」としての性質を有しています。
憲法の最高法規性は、日本国憲法では98条1項で宣言されています。
fa-check-square-o憲法には、➀自由の基礎法、➁制限規範、➂最高法規という3つの特質がある。
fa-check-square-o自由の基礎法とは、憲法が国民の自由を基礎づける法規範であることを指す。
fa-check-square-o憲法は、国家権力を制限する規範(制限規範)として働く。
fa-check-square-o憲法が国民の自由を守るために国家権力を制限できるように、憲法は最高法規であることが必要。
憲法の基本原理
日本国憲法には3つの基本原理、“三大原理”と呼ばれるものがあります。
それは、
①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義の3つです。
国民主権
国政における最終的な決定権を国民が持っていることを意味する原理です。
憲法学では、“国の政治のあり方を最終的に決定する力または権威が国民に存するというもの”という定義が良く使われます。
国民主権は、日本国憲法では、憲法前文1項および1条で規定されています。
基本的人権の尊重
基本的人権とは、人である、ただそれだけで当然に有するとされる権利のことです。
憲法は国民の自由を基礎づける法(自由の基礎法)として制定されたものです。
したがって、国民の権利・自由の保障=基本的人権の尊重は、憲法の採用する大きな原理の1つになっています。
平和主義
日本国憲法では、戦前に軍国主義化から戦争に至った反省に基づき、徹底した平和主義の立場をとっています。
憲法9条では、戦争放棄・戦力不保持等を明文で宣言しています。
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。